NHK大河ドラマ「光る君へ」には、戦国時代の大河のような合戦シーンはありませんが、それに負けず劣らず予算がかかるのが平安絵巻を彩る豪華絢爛な衣装です。そして平安時代と言えば、十二単ですが、実は光る君へでは数えるほどしか登場していないって知っていましたか?今回は十二単の正体について解説します。
十二単の見分け方
では、ドラマにおいて十二単を着ている人とそうでない人はどう見分けるのでしょうか?これは割合簡単で、床をひきずる白い衣を着ている人は確実に十二単を着ていると断言出来ます。あれは、裳着と言って正装には欠かせない衣装だからです。例えば百人一首の紫式部も清少納言も白い衣を長く引きずっていますね?あれが十二単を着ている証です。
十二単は女房装束
大河ドラマを見ていると、中宮定子や東三条院のような上級の貴族や妃は十二単を着ていない事に気が付きます。じつは十二単とは宮中に仕える女房と呼ばれる女性たちのユニフォームであり、女房達以外は着る事はないのです。もちろん、清少納言や紫式部も家に帰ると十二単を脱ぎ、もっと寛げるカジュアルな服装に着替えていました。
十二単の分類
十二単は上から順番に4つの分類から出来ています。
唐衣(一番上に着る)
裳(床を引きずる白い衣)
五衣(五枚で赤から白にグラデーション)
単(肌着)
さて、この4種類ですが、いわゆる十二単は、真ん中の五衣の事を意味していて、唐衣や裳、単は除外されます。全体では8枚の衣装を重ね着する事になりますが、その重量は20kgに達するそうです。
十二単は十二枚ではない
ここまでの説明でも、お分かりになるかと思いますが、十二単は十二枚の衣装を着るという意味ではありません。単とは裏地がない着物を意味していて、唐衣、裳、五衣の中で裏地がないのは五衣だけです。つまり十二単は基本的には五枚という事です。では、どうして十二単と言うのか?という話ですが、これは数字の十二ではなく、十二分に着るという意味ではないかと考えられています。
二十単になったケースも
では、十二単の美しさはどこにあるのでしょうか?これは、五衣のグラデーションにあります。五衣は唐衣の内側にあるので、見えるのは襟と袖だけですが、五衣は基本、一番上が紅梅色で、それが次第に白に変化するように重ね着しています。この袖色が次第に変化していく様子に、着ている人の色彩センスが出てくるのです。そのため平安時代後期には、少しでもライバルに差をつけようと五衣を10枚、15枚と重ね着する人も登場し、トータルでは二十単になったりしたそうですが、あまりに贅沢だという事になり平安末期には五衣は五枚に限定されるようになりました。
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