クリスマスが近くなると定番のメニューと言えばローストチキンではないでしょうか?
アヒルやガチョウやニワトリのもも肉を焦げ目をつけて焼き上げたローストチキンはクリスマス料理の王様と言って過言ではないでしょう。しかし、実はローストチキンの歴史は古く、平安時代には宴会のディナーとして定着していたのです。
この記事の目次
平安時代「別足」と呼ばれたローストチキン
平安時代の公家藤原公任が記したマナーブックである「北山抄」には、すでに「盛大な宴会の四つの献立に雉のローストチキンあり」と書かれています。
また鎌倉初期の厨事類記には「別足は焼いて関節から切りはなし薄紙で包んで盛りつける」と出ていて、すでに現在のローストチキンのように骨の部分に薄紙を巻き脂で手が汚れないように配慮がされています。
アルミホイルと薄紙の違いはありますが、これは紛れもなくローストチキンです。(雉だからローストバードかも)この時代のローストチキンは大貴族の宴会でしか振る舞われない高級食材でした。
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ローストチキンは肉ではなかった!
平安時代には仏教の影響で獣の肉は「四つ足」と呼ばれ、食べると血が汚れて不浄とされ敬遠されていましたが、鳥については四つ足ではないので獣の肉とはみなされませんでした。
なんとなく、こじつけのような気もしますけど、実際に動物性タンパク質が一切取れないのは辛いので、お坊さん以外にはこういう方便が必要だったのかも知れませんね。
そうか!だからローストチキンを四つ足ではなく「別足」と呼ぶのかも知れませんね。知らんけど…
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悪左府とローストチキン
ローストチキンの食べ方と言えば、アルミホイルの部分を持って、多少口の周りがソースで汚れるのも気にせずにかぶりつくのが一番美味しい食べ方だと思います。
しかし、平安時代のローストチキンは、大貴族にしか出されない高級食材なので、現代のような豪快な食べ方は卑しいとして敬遠されました。
鎌倉前期に成立した「古事談」には、極端な性格から「悪左府」と呼ばれた。平安時代随一の学者、左大臣藤原頼長がローストチキンを食べるシーンが登場します。
同じ宴席に招かれた貴族が、左大臣のローストチキンの食べ方を興味津々で見ていると、頼長は関節の上をナイフで切り、曲がった部分を一口だけ食べてあったとの事です。
平安時代のローストチキンは、高級貴族に出されたので、料理人は食べやすいように幾つもナイフで切れ込みを入れ、ガッついて口を汚さなくてもいいように工夫されていました。だから悪左府も口元を汚さずに優雅に食べる事が出来たのです。
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焼き鳥は昔から塩とタレ
一方、ローストチキンに比べると庶民的で日常食の焼き鳥は室町時代には誕生しました。
当時の料理本には、焼き鳥料理のことという項目があり、
「焼き鳥の肉は長さ3センチ程度縦に薄く切る。塩の場合は炙る前に酒をかけてよく炙ること。塩以外はいつものように鳥をさばいて、スリ醤(醤油の素)に浸してから炙るとよい」
このように記録され、焼き鳥の調理法に塩と醤油たれの二種類があった事が分かります。ほとんど、今と変わらない事に驚きますね。室町時代にもお客が「今日の焼き鳥は塩で頼む!」とか「今日はタレの気分だな」とか料理人に注文していたのでしょうか?
ただし、この時代の焼き鳥はニワトリではなく雉のような野鳥でした。
ニワトリが食べられなかった理由は?
現在はローストチキンとしてポピュラーなニワトリは日本には弥生時代には大陸から渡って来たようですが、長い間食用にはなりませんでした。
その理由は目覚まし時計がない大昔は、夜明けを告げるニワトリが神秘的で神聖な鳥とみなされたためで、天武天皇の時代675年には、牛、馬、日本猿、犬と並び、ニワトリを食べてはならないという詔が出ています。
ニワトリに関しては卵もタブーであり、鶏卵を食べた為に地獄に落ちた男の話が出てくるほどでした。
ニワトリが肉食タブーから外れたのは戦国時代に南蛮文化が入り込み、鶏卵を使用したお菓子であるカステラやボーロの製造法が伝わったためで、江戸時代に入ると鶏肉も食べられ、鶏肉の焼き鳥も登場するようになります。
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日本史ライターkawausoの独り言
今さらですが、チキンは鶏肉の事なので平安時代のローストチキンは正確にはローストバードという事になりますね。しかし、洋風なものと思っていたローストチキンに似たモノがすでに平安時代には存在していたとは、美味しいものを求める人間の欲求は古今東西、あまり変わらないのかも知れません。
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