目立ちたがりの大将が叱られる事も…
一番乗りや一番クビは、部下のモチベーションを上げる重要なイベントです。だから、目立ちたがりの大将クラスが部下より先に敵陣に踏み込んで、一番乗りと一番槍を得てしまうと、部下のモチベーションがガタ落ちする事になりました。
このような場合には、大将が部下の手柄を奪ったとして、総大将から処罰される事もあったそうです。一口に論功行賞と言っても、色々とさじ加減があり、勝てばいいという、単純なモノではなかったのです。
コミュニケーションも必要
いかに一番首や、一番乗りを果たしても、それを見ている味方がいないと無意味です。合戦には目付である軍監がいて、その記録を元に手柄が判断されるのですが、軍監が戦場を走り回って、すべての将兵の手柄を確認するのは不可能ですから、どうしても自己申告が中心になります。
とは言え、本人以外に手柄を証言できる人がいないのでは、軍監も
「それは誠か?」と疑いの眼を向けてきます。
その為、心得た武士は、必ず仲が良い武士を見つけ、つかず離れずで戦い、お互いに誰が誰の首を獲ったと確認し合いながら戦っていました。こうしておけば、不意に敵に襲われても味方に救ってもらえる可能性が高くなるからです。
騎兵の突撃でも、味方を振り切って敵中に突撃するなどと言う事はめったになく、少し先行して、味方がついてきている事をちらちら確認しつつ、戦う事が多かったようです。ちょっとガッカリですが、恩賞が欲しくて戦う戦国武将にとっては、恩賞にならない手柄なんて意味がないのですから、それが当たり前でした。
戦国の一匹狼というと、何だかカッコイイですが、そういう人は友達もなく、なかなか手柄も認めてもらえない事になるので、コミュニケーションは大切ですね。
戦国時代ライターkawausoの独り言
今回は、論功行賞について、書いてみました。一番が強調される論功行賞ですが、必ずしも一番だけが評価されたのではなく、敵の有益な情報を掴んだ者や敵を寝返らせた者なども、時と場合によっては、大きな手柄になりました。
また、恩賞としては、土地が最も喜ばれましたが、それ以外でも馬や太刀、茶器のようなステータスになるものから、金銭まで幅がありました。著名な戦国大名の場合、手柄を褒めたたえた感状を授けるのも立派な恩賞でした。
主を代える時に、感状を見せる事で好待遇で召し抱えられる確率が高くなるからです。命懸けの働きの上で得られた恩賞、そこには戦国武将の悲喜こもごものドラマがあったのでしょうね。
参考文献:歴史通 戦国合戦の作法と舞台裏 朝日新聞出版
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