近年、病の蔓延や度重なる戦争の影響で、「仏教」が注目を浴びているように見えます。ただ、仏教には色々な宗派やグループがあって複雑に見える気がします。
今回は、「仏教」を大きく二つに分けて解説していきます。それは、上座部仏教と大乗仏教です。大きく分ければ、この二つになるようです。それでは、これら二つについて解説していきましょう。
上座部仏教という名称について
まず、上座部仏教についてですが、「小乗仏教」や「初期仏教」とも言われてきたようです。さらに、信仰が広がっていった地域がスリランカやタイ、ミャンマーなど、南方の地域になるため、「南方仏教」や、「南伝仏教」などとも言われることもあるようです。
ブッダが自身が説かれた教えを正確に伝承しようとしていると解釈されています。ただ、上座部仏教や小乗仏教と言われてきたように、「選ばれたものしか救われない」と理解されていることが目立ちます。(しかし、これには誤解があるようです。)
そもそものブッダの教えの根本とは、あらゆる生命(自分も含めて)に慈しむ気持ちで接することであり、それを堅実に実行するべきと、上座部仏教の説法では教えられます。ですから、その道から外れる者は、残念ながら、「仏教」の道から外れるという理解したほうがよいでしょう。
そこで、上座部仏教の界隈では、「初期仏教」と言われることが目立ちます。ブッダ本人が亡くなった直後の頃から成立していて、「仏教」の歴史においても初期の段階に成立していたことになるのです。ここでも、敬意を表して「初期仏教」を採用します。
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枝葉のように広がってきた大乗仏教
次に、「大乗仏教」について説明します。漢字の意味から考えますと、大多数の人々が乗れる大船のように、多くを救うという仏教の宗派という言い方になるでしょうか。この考え方が、歴史的にも広く理解されてきた印象です。ただ、この宗派は、仏教の誕生地のネパールから中国大陸、朝鮮半島から日本へと北方地域を巡りながら東へ伝わった経緯もあり、「北伝仏教」とも言われることもあります。
ここでは、一般的に広く知られている「大乗仏教」を採用します。しかし、大乗仏教と言っても、たくさんの宗派があり、それぞれが独立したモノ(教え)と言ってよいかと思います。例えば、頭の中で考えることに重きを置き、哲学の要素が強い宗派もあれば、冷たい滝に打たれたり、熱い火の中に飛び込んだり、厳しく苦行することを求められる宗派もあります。一方で、常に座禅を続けることを勧める宗派もあれば、信心して仏像を拝み続けることや、念仏を唱えるだけでよいとしている宗派もあります。
さらに、歴史を振り返ると、僧侶でありながら、戦争に参加する者も数多くいました。まず、天台宗の比叡山・延暦寺の僧兵が挙げられます。
その中には、武蔵坊弁慶もいました。さらに、禅僧が政治や戦に参加したケースもあります。
例えば、戦国時代の今川家の軍師の太原雪斎はかなり有名です。
また、武田信玄は、臨済宗の禅僧として出家していました。
さらに、上杉謙信は、幼少期に曹洞宗の禅寺で仏道を学びましたが、成人して上杉家の当主になる頃には、密教系の「真言宗」の僧侶として出家し、謙信と名乗ったのです。
謙信の葬儀では、真言宗の大乗寺が導師を務めたと伝わっています。このように、大乗仏教は、初期仏教のように一括りにできず、枝葉のように分かれた「宗派」が、それぞれブッダを崇める新たな宗教を作ってきた印象です。
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初期仏教で伝承されてきた教え
それでは、ここで、初期仏教(上座部仏教)の話に戻ります。本来のブッダの教えとされる、初期仏教では、何を教えて、伝承されてきたのか?ということについて書きます。簡潔に言えば、皆が幸せになるための道として、あらゆる生命に「慈しみ」の気持ちで接することが大事だということです。「慈しみ」とは、言い換えると、「慈悲」や「慈愛」という言葉で表されることもあります。さらに加えるなら、全世界は、さらに全宇宙で起きている現象は、「無常」であると理解することが求められるようです。
無常とは、常に変化するということです。つまり、永遠に存在し続けるモノはないから、どんな生命も消えて亡くなるものだから、あらゆる生命に対して慈しみの気持ちを持って接し、生きていくことが、幸福になる唯一の道だというのです。このようにシンプルな教えとなっています。
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終わりに
初期仏教では、その他に多くの戒めや説法などが伝わっていますが、それらは、もっと良く理解し、実践するための具体的な方法であり、基本的な教えは、「慈しみ」と「無常」を大切にすることであるようです。このように、仏教とは多岐にわたり、多くの人々が、ブッダを尊敬していたという証拠になるのでしょう。
【了】
【主要参考資料】
・大乗仏教の思想
(副島正光 著)
清水書院
・ブッダとサンガ〈初期仏教〉の原像
(三枝充悳【さいぐさみつよし】著)
法蔵館文庫
・ 南方仏教基本聖典
(ウ・ウェープッラ 著)
(中山書房仏書林
・ 沙門果経
(アルボムッレ・スマナサーラ 著)
サンガ文庫