NHK大河ドラマ「どうする家康」の冒頭、桶狭間の戦いで緊張気味の家康が着ているゴールド一色の鎧、あれには名前があるってご存知ですか?あの鎧は金荼美具足と言って、ドラマのオリジナルではなく、実際に存在する鎧なのです。
この記事の目次
ドラマでは今川義元から与えられたという設定
金荼美とは変な名前のようですが、荼美とは当て字で「○○尽くし」という意味です。つまり金荼美はゴールド一色という意味で見たままなんですね。大河ドラマにおいて家康(当時は元康)は、この金荼美具足を桶狭間の戦い直前に今川義元から与えられた事になっています。この桶狭間の戦いで家康は、大高城に兵糧を運び込む重要な任務を任されていました。ドラマの家康が緊張気味なのは金荼美具足に劣らない働きをしないといけないという重圧と戦っているからなのです。
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胴には無数の傷がつき激戦を物語る
金荼美具足は仏胴と呼ばれる一枚鉄板の部分に、無数のキズがついているそうです。これは家康がこの鎧を着ている時に襲撃され応戦した跡かも知れず、だとすれば桶狭間で義元が討たれた時に命からがら松平家の菩提寺まで逃げのびた時についたキズかも知れません。
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金荼美は最新式の当世具足だった
金荼美具足は、戦国時代最新の甲冑製造技術である当世具足の方式で造られています。従来の鎧は、小札という小さな鉄の板を何千枚と紐で結んで編み上げる形式でした。しかし、これでは制作に時間がかかる上重いという欠点があります。戦国時代は合戦が頻発し甲冑の需要も増える一方だったので甲冑職人は技術革新を考えざるを得なくなりました。
戦国後期の日本には南蛮から一枚鉄板で出来た南蛮具足も伝来していました。甲冑職人はここからヒントを得て胴回りは一枚鉄板で制作し足回りも細長い鉄板を縦に連ね、小札の数を大幅に減らす事に成功します。これが当世具足だったのです。
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黄金の鎧も当世具足だからこそ
作業工程を減らした事で職人の仕事にも余裕が生まれます。それまでコストと手間の問題で、似たような甲冑しか造れなかったものが、斬新なデザインの甲冑も造れるようになったのです。全体を金箔で覆った金荼美具足も技術革新による作業工程の短縮で生まれた産物と言えるでしょう。
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金荼美具足以外の家康の鎧は?
天下人家康は、複数の鎧を保有していました。例えば天下分け目の関ケ原で家康が着用していたのは、伊予札黒糸縅胴丸具足で、兜の前立てが歯朶である事から歯朶具足とも呼ばれています。こちらの鎧は金荼美具足とは対照的に黒漆でカラーリングされています。
もうひとつは、熊毛植黒糸縅具足と言い、兜に水牛の角を象った桐製の角を立て、胴から草摺りから籠手に至るまで熊の毛皮を植え付けて黒糸で縫い付けた贅沢な逸品です。ただ、この鎧は角が兜に比較しても大きすぎて実用向きではない事から、実際に家康が着用したものでなく、威厳を示す為に造られたようです。
質素倹約というかケチで知られる家康ですが、一方で信長に負けず劣らず、南蛮好みであり、奇抜な物や珍奇な品を好んだと言われているので、この熊毛植黒糸縅具足も家康の派出好みな性格が現れた鎧と言えるのかも知れません。
騎馬が背中につけているパラシュート
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金荼美具足はどこにある?
金荼美具足は、静岡県駿河郡の久能山東照宮に保管されています。久能山東照宮は家康の遺言で遺体が埋葬された場所で、その跡地に東照宮が建てられた経緯があります。
また金荼美具足は家康の覇業の出発点である事から歴代の徳川将軍に大事にされ、江戸260年間、江戸城内に安置され明治時代以後は、久能山東照宮で安置されてきました。しかし400年の歳月で金荼美具足は傷みが激しくなり近年は展示が不可能になっていましたが、2015年に鎧は修復され、現在は見る事が出来るようになっています。
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日本史ライターkawausoの独り言
今回は桶狭間の戦いで家康が着ていた金荼美具足や、家康が保有していた鎧について解説してみました。鎧は戦国の武将たちが命を預けた大切な存在、それだけに今の人間では分からない強烈な思い入れとかもあったかも知れませんね。
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