2023年のNHK大河ドラマは「どうする家康」です。その第一話は「どうする桶狭間」で、今川義元に兵糧の輸送を命じられた松平元康時代の家康が登場します。兵糧運びなんて地味な仕事のようですが本当は超重要で誰にでも任せられる仕事ではなかったのです。
この記事の目次
戦場に兵糧を運ぶ小荷駄隊
戦国時代の戦場では兵士は2~3日の兵糧を自前で調達する事を義務付けられていました。どうして、2~3日かと言えば、当時の合戦は大体2~3日で終わっていたからです。
しかし、時代が進み、戦国大名が強大化すると戦も長期化していき、足軽たちが持ってきた兵糧では足りなくなります。このため戦国大名は小荷駄隊という補給部隊を組織して、合戦が起きている近くまで兵糧を輸送していました。松平元康が義元に命じられた任務は、まさに小荷駄隊を指揮する小荷駄奉行だったのです。
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敵ばかりか野盗にも狙われる小荷駄隊
桶狭間の戦いで松平元康は、三河勢を率いて前線の大高城に兵糧を運び込みます。今川軍は2万とも4万とも言われる大軍で、運び込む兵糧も膨大でした。ちょっと聞くと、兵糧を運び込むのは大変かも知れないけど、織田軍と戦うわけじゃないし、そこまで命懸けじゃないよなと思ってしまいそうですがとんでもありません。兵糧を運び込む小荷駄隊は真っ先に狙われる存在でした。
第一に小荷駄隊は兵糧を運ぶのが仕事なので重い武器を持っていません。そのために小荷駄隊を護衛する部隊がいたくらいです。そのため敵から見れば小荷駄隊は反撃を受ける可能性が小さい上に、全滅させる事ができれば兵糧を奪い取れるボーナスステージみたいなものでした。
小荷駄隊は軽装備のせいで、多少規模が大きい野盗にさえ狙われる存在であり、小荷駄隊を指揮する武将は少しも気が抜けませんでした。
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正規軍の邪魔にならない距離感も大事
小荷駄奉行は兵糧を城に運び込んで終りではありません。兵糧を奪われないように合戦が終わるか担当を交替するまでは、警戒を絶やす事は出来ませんでした。
また、小荷駄隊の位置にも気を配る必要があり、敵と味方が戦っている場所からは、少し離れて合戦の邪魔にならないようにし、だからと言って離れすぎるのもダメでした。このように小荷駄奉行は危険と隣り合わせな上に細心の注意が必要なので、どの陣営でも特に優れた武将にしか任せなかったのです。
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家康は今川義元に信頼されていた
以上のことから考えて、松平元康時代の家康は今川義元に信頼されていて、かつ兵糧の運搬を任せられるレベルで有能であった事が分かります。家康が叛けば大量の兵糧が織田方に渡ってしまい、今川軍は飢えに苦しむ事になるので、家康への信頼はかなり厚いと考えても良さそうです。
近年では、家康は義元の人質で松平家は傀儡に過ぎなかったとする従来の説も見直され、義元は家康を今川の一門衆に準じた扱いをし将来的には岡崎城を明け渡すつもりだったのではないかとも言われています。家康としても、そこまで義元に期待されているなら、見事に兵糧を大高城に運び込めば岡崎城に戻って一国一城の主になれるという期待もあったかも知れません。
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義元の死で望みは一度消えるが
無事に大高城に兵糧を運び込んで義元の期待に応えた家康ですが、義元は桶狭間で休憩中に織田信長の奇襲を受けて討ち取られてしまいました。こうして義元に気に入られて岡崎城に帰還する夢が潰えた家康ですが、義元の死後、家督を継いだ今川氏真は家康が織田方につく事を牽制するために、岡崎城への帰還を認めます。以後、家康は弱体化する今川家を見限り、織田信長と同盟を結んで逆に、今川家の領地を侵食していく事になるのです。
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日本史ライターkawausoの独り言
大河ドラマでは弱虫家康として登場する徳川家康ですが、本当に弱虫なら義元に重要な兵糧運搬の仕事を任せられないでしょう。家康の潜在能力は高く、義元もその将来性を買い、同時に今川家への忠誠をみきわめるために、大事な仕事を家康に任せたのだと思います。
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