NHK大河ドラマ鎌倉殿の13人で僧侶として占いや占星術をもっぱらとしているのが阿野全成です。
鎌倉殿の13人で坊主頭なのは後白河法皇と文覚、それに阿野全成くらいなのでかなり目立ちますね。ドラマでは法力を持つと自称していた阿野全成ですが、実際にはどんな人物だったのでしょうか?
鎌倉時代の占いはかなり重宝されていた
ドラマでは頼朝の側近として御所の建設場所の吉兆や行事の日取りを占いで決めていた全成ですが、史実の全成が頼朝に占いで仕えたとする記述はありません。
しかし、鎌倉時代には占いが暮らしの隅々まで浸透していたのは事実で、鎌倉幕府の歴史書、吾妻鏡には動物の奇異な行動まで、神のお告げと考えてお祓いや意味を解き明かす努力が陰陽師により実行されていました。
それらの占いには、将軍の衣の裾が鳩の糞で汚れた。将軍の畳が犬の糞で汚れた、幕府の畳間に犬の糞が落ちていたというような現在からみれば下らない事まであり、鎌倉の人々が占いと密接に関係していた事実が浮かび上がります。
実際に頼朝の傍で合戦の日取りを決めていたのは、佐伯昌長、藤原邦通という京都から来た文官で鎌倉殿の13人には出てこない事から、彼らの役割を阿野全成が受け持つという事なのかも知れません。
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史実の阿野全成
史実の阿野全成は、7歳の時に父、義朝が平治の乱に敗れて敗死。強制的に醍醐寺で出家させられますが、荒くれ者として有名で悪禅師とあだ名されました。
その後は大人しくしていましたが、治承4年(1180年)以仁王による平家追討の令旨が出ると密かに寺を抜け出し修行僧の身なりで東国へと下ります。
そして、石橋山の戦いで敗北し逃げる途中の佐々木兄弟と偶然に知り合い、相模国渋谷重国の荘園で匿われた後、再起した頼朝と下総国鷺沼の宿舎で体面します。全成は平治の乱以後に頼朝が初めて再会した兄弟であり、頼朝は感涙したそうです。
全成には武蔵国長尾寺が与えられ、治承4年11月に北条政子の妹、阿波局と結婚します。
頼朝存命中、全成には目立った活躍はありませんが坊主としてより御家人として活躍していたようです。阿波局が北条一族であり同時に政子の産んだ千幡(後の源実朝)の乳母夫の立場になると、二代将軍頼家と外戚、比企氏と対立するようになります。
しかし、建仁3年(1203年)頼家に先手を打たれて謀反人として捕縛され御所に押し込められ5月25日に常陸国に流された上に配流先で頼家の命令を受けた八田知家に誅殺されました。
全成の誅殺は縁戚である北条時政、義時父子に危機感を与えその後比企の乱へと繋がります。
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阿野全成の子孫
全成は阿波局以外にも複数の妻がいたようですが、阿波局との間に四男、阿野時元が生まれます。本来なら北条家の血を引く者として将来は明るいはずでした。
ところが時元の運命は父が頼朝の兄弟であった事で暗転します。
三代将軍実朝が暗殺され、京都から摂家将軍を迎える決意をした伯母の北条政子が将来の反乱の禍根を絶つため建保7年(1219年)時元に謀反の疑いを掛け討ち死にさせてしまうのです。
阿野家自体は時元の子阿野義継に引き継がれ存続しますが謀反の疑いを掛けられた事もあり、北条一族の血縁でありながら幕府の要職につく事もなく南北朝期には消えています。
一方で全成の娘は公家の藤原公佐に嫁ぎ、子の実直は母方の阿野を名乗って公家阿野家を創設、その子孫には後醍醐天皇の寵愛を受け、後村上天皇を産んだ阿野廉子がいます。
全成も自分の子孫が北条得宗家を倒す後醍醐天皇に嫁ぐとは考えなかったでしょうね。
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日本史ライターkawausoの独り言
ドラマとは違い史実の阿野全成は特に頼朝存命中は、これといって活躍する場面がないようです。ようやく頼朝死後に北条氏の側近として、将軍頼家を抑え込んで外戚比企氏を滅ぼそうと画策しますが頼家に先手を打たれて逮捕され無念の最期を迎える事になります。
ちょっと可哀想なのは、阿波局は夫の阿野全成が死んだ時も、息子の時元が謀反の濡れ衣をきせられて討ち死にした時も存命であったという事です。兄弟の義時や政子が死んだ後、数年生きた阿波局は夫と息子を失った権力闘争をどんな風に振り返ったのでしょうね?
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