日本人の大半が好きであろうスパイス香るインドカレー、毎日食べたいとは思わないけど、ある時、無性に食べたくなる味です。でも、その割にインドカレー店は、いつも暇そうにしていませんか?ココイチカレーみたいに大入り満員のインドカレー店はあまり、見た事がないですよね?なのに、どうしてインドカレー店は潰れないのでしょうか?
この記事の目次
インドカレー店が潰れない理由
インドカレー店が潰れない理由はコストが掛からない経営スタイルがあります。インドカレー店には欠かせないナンですが、こちらのナン一枚の原価は20円程度です。インドカレー店では、原価20円のプレーンナンを100円程度で販売しているので原価率は20%です。一方で通常の飲食店の原価率は30%でインドカレー店よりも10%も割高なのです。
また、人件費が極端に安いことも理由の一つです。インドカレー店とは言いますが、実際に働いているのはネパール人やバングラデシュ人です。彼等の本国は貧しく、日本でコックとして働こうと考えているのですが、その為には就労ビザを取得する必要があります。この就労ビザの取得には、日本のインドカレー店で就労するのが早道ですが、インドカレー店は就労ビザを持っている事を良い事に、ネパールやバングラデシュの従業員の賃金をかなり低く設定しているようなのです。
人件費が低いのでインドカレー屋は客が少なくても利益が出て潰れないのです。最後のポイントは、カレーを作りナンを焼くのに特別な調理器具が必要ない事です。一般的にラーメン店を開く際のコストは2000~3000万円が相場ですが、インドカレー店だと500~1000万円のコストで済みます。創業コストが低いので価格が安く、お客さんがあまり入らなくても利益が出るわけです。
こちらもCHECK
-
紛失した西郷隆盛の手紙[百年ぶりに再発見]
続きを見る
インドカレー屋が増えている理由は?
インドカレー屋が増えている大きな理由は、ネパール人料理人が日本で出稼ぎをする手段としてインドカレー店を出店している事が大きいようです。ネパール料理はインド料理にも影響を受けていますが、ネパール料理と言うと知名度が低いので、あえてインドカレー店として看板を掲げているケースが大半です。
また、インドカレー店は材料原価が安く、大掛かりな調理器具も不要で、駐車場などがなくても安価な雑居ビルの一室でも開店できるので、コストが低く抑えられ日本に出てきたネパール人でも開業しやすいのです。こうしてカレー店の経営に成功した経営主は、またネパールから自分の家族や親戚を呼び寄せて、カレー店の従業員として働いてもらいます。やがてその従業員も独立して、同じようにインドカレー店を開業するという繰り返しでインドカレー店は増加しているのです。
こちらもCHECK
-
昭和恐慌とは?経済大混乱の背後にある原因とは?
続きを見る
カレー屋の年収は?
カレー屋の年収はお店の規模や繁盛しているかどうかにより違いますが、一般的には500万~600万程度と考えられています。 同じく日本の国民食であるラーメン屋の平均年収が394万円ですので、それよりも100~200万程度多い事になります。
また、カレー屋の場合は原材料原価がラーメン屋よりも安く、お客の回転率も速いので、必要経費や税金を差し引いた手取りではラーメン店よりも収入が多くなるかも知れません。もっとも、これは平均であり繁盛していない場合にはラーメン屋の年収を下回る事も当然あります。
こちらもCHECK
-
皇居と江戸城、歴史が結ぶ驚きの繋がり!
続きを見る
インドカレーの市場と顧客層
カレーは明治時代に日本に入ってきて普及し、現在では国民食と読んでも過言ではありません。今までカレーを食べた事がないという日本人はまずいないでしょう。しかし外食産業におけるカレー屋の市場規模は900億円程度と同じく国民食であるラーメンの6000憶円に比較すると、6分の1以下とさほど大きくありません。
一方で外食でカレーを月1回以上食べる人は50%もいて、しかも、その中の80%の人は、カレーをファミレス等ではなくインド料理やタイ料理といった専門店で食べているのです。
そのため、カレーには常に一定の需要があり外食産業としては安定しています。インドカレー店を利用しているのは特に30~50代男性が多く、利用率が30%以上を越えています。一方で女性は全体で利用率が24%でカレーはどちらかと言えば男性の食べ物になっているようです。
こちらもCHECK
-
坂本龍馬は結局なにがしたかった?開国後の龍馬意図
続きを見る
日本でのインドカレーの人気の背景
日本でインドカレー店とされている店の多くが、実はネパール人が経営するネパール料理なのだそうです。この理由はインドでは料理人の地位が高く、日本に出稼ぎにくるインド人が少ない点があります。一方でネパールは貧しく、国民の多くが海外に出稼ぎに出て、本国に送金する出稼ぎ国家なのです。
インドとネパールは近く、カレーなどの食文化も近いので、ネパール料理ではなくインド料理の看板で日本で出店しています。ネパール人は出稼ぎの為に日本に来ているので経営が柔軟で、常に日本人客のニーズを取り込む事に腐心し、高級料理店のイメージがあったインドカレー店をファミレスのようなスタイルに変え、子ども連れのお母さんでも気軽にはいれるようにしました。その結果として人気に火がつき、現在のカレーブームに繋がっているのです。
こちらもCHECK
-
江戸の茶屋娘とは?元祖会いにいける江戸時代のアイドル
続きを見る
インドカレー店の経営戦略
インドカレー店の経営戦略としては、他では味わえない独自のカレーメニューや価格の安さとボリューム、ランチタイム時のサラリーマンの取り込み、自家製野菜の栽培などSDGsを意識したものがあります。特にインドカレー店の利用者はピンポイントでお店を利用するので駐車場が無かったり、雑居ビルの一室であっても足繁く通う傾向があり、固定客を捕まえる事で経営が安定するメリットもあります。
こちらもCHECK
-
坂本龍馬と渋沢栄一、ビジネス好き2人の運命を分けたのは何?
続きを見る
インドカレー店が子連れ客のオアシスに
インドカレー店には、実際にはネパール人が店を出しているインネパ系(インドネパール)のお店が多いですが、特に子ども連れのお母さん客で賑わっているケースが多いようです。その理由はネパール人に子供好きの人が多いからで、子供たちが店内で大声を出したり、泣いたりしていても、愛想よく話し相手にもなってくれるそうです。
これが日本のカレーチェーン店だとこうはいきません。子どもが走りまわったり大声で泣いたりしようものなら、他のお客さんからは白い目で見られ、従業員には迷惑そうな顔をされます。子連れのお母さんには、インドカレー店が子連れでも安心して楽しめる心のオアシスになっているのです。
こちらもCHECK
-
明治時代に設立された国立銀行の役割とは?
続きを見る
インドのカレーは日本とどう違う?
日本の一般的なカレーは小麦粉を使ったカレールウでとろみがありますが、本場のインドカレーはルウを使わず複数のスパイスを調合して作ります。そのため、インドカレーは汁気が多くサラサラしています。
また、インドカレーは具材の味よりもスパイスの味が強いですが、日本のカレーは具材の味が強くなっています。日本でカレーと言えば、それは主食のご飯と合わせる事が多く、ライスカレーと呼ばれますが、インドではチャパティやパラタ、ロティ、パパドのような薄いパンと一緒にカレーを食べるのが一般的です。
こちらもCHECK
-
渋沢栄一が紙幣に選ばれた理由とは?
続きを見る
店舗運営の工夫と効率化
インドカレー店舗の運営の工夫については効率化と業態の多様性があります。まず、効率化ですが、こちらはいかにお客の回転率を上げるかに関係してきます。カレーと並ぶ国民食であるラーメンの場合、作り置きをしない店舗だと麺から茹でて、具材をトッピングして出すまでに10分弱かかります。一方、インドカレー店の場合、カレーを温めてライスの上にかけたり、簡単なサラダを用意してナンを添えるだけなので2分で完成します。また、カレーは作り置きしていてもラーメンのように味が落ちて文句を言われる事がありません。
料理の提供が速いという事は、それだけ早くお客さんが回転する事になるので、同じ時間稼働してもインドカレー店のほうがお客を捌け利益が出るのです。もうひとつは業態の多様性があります。インドカレー店はラーメン屋のような大きな寸胴や大火力を必要としませんから、家庭で使うような調理器具でカレーが提供できます。そのため店舗がなくてもキッチンカー等の車両を使った販売も出来ますし、店舗とキッチンカーの併用も可能です。
こちらもCHECK
-
華族とは?四民平等から誕生した特権階級を紹介
続きを見る
インドカレー屋の未来
インドカレー屋は最盛期には全国に5000店舗を数えるまでに急拡大し、すでに飽和状態を迎えたとする考え方もあります。2018年からは登録店舗の減少が顕著になり、2022年にはコロナの影響で2598店舗にまで減少。2014年の3015店舗から400店舗も減りました。但し、これはインドカレー屋の過当競争だけのせいではないようです。
多くの経営が不調なインドカレー店では、特にメニューに工夫を凝らす事もなく、従来の日本人がイメージしているカレーの提供に拘り、日本人のニーズの変化にも関心がないようです。また、店主が日本社会に溶け込もうとせず、日本語力も低いために、お客さんから直接、感想を聞くという事さえしないケースも多いのだとか…逆に成功して繁盛しているインドカレー店では、店主が積極的に日本語を学び、お客さんとコミュニケーションを取る一方、地域のコミュニティに溶け込んで、顔の見える付き合いを継続しています。日本人は食に貪欲であり、新しい食文化を比較的寛容に受け入れる一方で、飽きる事も早いので、インドカレー店も、今後は安くボリュームがあり早いだけでは経営が厳しくなるでしょう。
こちらもCHECK
-
海賊と呼ばれた男のモデル出光佐三とはどんな人?
続きを見る
ナンは右手だけで食べる?
インドでは食事に使えるのは右手のみです。左手は排泄行為をした後にお尻を拭くので不浄の手として食事では使いません。インド人は右手だけの食事に慣れているので片手だけでナンをちぎって食べたり具材を器用に混ぜる事も可能です。しかし、両手を使う日本人の場合、右手だけでナンをちぎるのは難しいので慣れない場合は両手を使っても問題ないとされています。
こちらもCHECK
-
大日本帝国海軍はどうして強くなったの?陸軍の付属物から対等になるまでを解説
続きを見る
インド人は本当に毎日カレーを食べるの?
カレーとは元々、ふんだんなスパイスで各種の具材を煮込んだ汁状のモノという意味なのだそうです。そのため、日本人がカレーと思い込んでいる料理も、本場のインド人に言わせれば、あれはカレーではないという事もあるようです。しかし、どの料理もふんだんにスパイスを効かせるのは共通なので、日本人から見ればインド人は毎日カレーを食べているように見えるという事でしょう。カレーに使う食材も様々で特に豆の種類が多く豆カレーは、インドの家庭では人気メニューになっています。また、数多くのスパイスがあり、同じ食材を使った場合でもスパイスの組み合わせで味が変わります。だからインド人は毎食カレーでも飽きることがありません。
こちらもCHECK
-
日比谷焼打事件とは?煽り報道が産み出した大暴動から得る教訓
続きを見る
インドのカレーはどのくらい辛い?
インドのカレーには辛い物も辛くないものもあります。インドは日本の凡そ8倍の国土と14億の人々が暮らす多民族・多宗教国家です。そのため、カレーの種類も数えきれない程にあり、甘いカレーから辛いカレーまで多種多様です。なので、インドのカレーはどのくらい辛い?という問いに答えを出すのはかなり難しいでしょう。
こちらもCHECK
-
日清戦争はどんな戦いだった? 敵はロシアでも清と戦う不思議な理由
続きを見る
インドにはカレーが無いのは何故?
日本のカレーはルウから作る、とろみがありジャガイモや人参、牛肉が入っているカレーですが、あれはインドを統治していたイギリス人がインドカレーを元にアレンジした亜種であり、本来インドに存在したカレーではありません。また、カレーの語源であるカリーの定義は、ふんだんなスパイスで各種の具材を煮込んだ汁状のモノなので、とろみがあり汁状ではない日本のカレーはそもそもカレーではないとも言えます。
こちらもCHECK
-
日露戦争とは?大日本帝国の命運を賭けた大戦争の光と影を解説するよ
続きを見る
インドカレーは日本発祥ってホント?
インドカレーは明治時代にイギリス料理として日本に伝来しました。だから日本発祥ではありません。明治時代の料理本には、イギリス風カレーの作り方が掲載されていますが、その中には食材としてカエルや長ネギを使うと書かれていて現在の日本のカレーとは随分違います。
日本で定番になったカレーの材料、タマネギ、ジャガイモ、ニンジンは、明治時代以降、北海道を中心にたくさん栽培されるようになり、価格も下がって手に入りやすくなりました。また輸入品ではない国産の安いカレー粉が出回るようになった大正時代には、今のような日本のカレーライスが出来ました。このように日本のカレーはイギリスが発祥ですが、日本の実情に合わせてアレンジが繰り返されて、現在のカレーに進化したのです。
こちらもCHECK
-
国家予算の1%を投入!岩倉使節団の功績って何?【大人の学び直し】
続きを見る
まとめ
外からは暇そうに見えるインドカレー店が潰れない理由には、原材料費のコストが安く、人件費が安く済み、料理の提供までに時間がかからず、大掛かりな厨房器具がなくても開業出来て、同時に雑居ビルのような交通アクセスが悪い場所でも、固定客を捕まえれば経営が成り立つ事です。しかし、それらの利点ゆえにインドカレー店は飽和状態であり、コスパ以外の売りを見出さないと将来的に経営は厳しいでしょう。