NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」自分勝手なキャラクターが多いドラマの中で土肥実平と共に仲裁役に回る事が多いのが三浦義澄です。
北条時政と幼馴染の設定の義澄はお調子者でいい加減な時政を気にかけ、時には厳しく叱責する有難い存在。北条氏に対しては強い友情を感じていて親身になって行動してくれます。そんな義澄ですが、実際にはどんな人物だったのでしょうか？
監修者
kawauso 編集長（石原 昌光）
姉妹メディア「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。
コンテンツ制作責任者
おとぼけ（田畑 雄貴）
PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、姉妹メディア「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。
この記事の目次
坂東八平氏 三浦義明の次男として誕生
三浦義澄は相模国三浦郡矢部郷の出身で大治2年（1127年）に三浦義明の次男として誕生したようです。父は坂東八平氏の1つ三浦氏の棟梁で、上総国の有力豪族、上総経澄が烏帽子親となって元服し義澄と名乗ります。
平治元年（1159年）に起きた平治の乱では父と共に源義朝の庶長子、源義平に従いますが義朝は平清盛に敗北。賊軍となった義澄は京都から逃げて相模国に落ち延びました。
長寛2年（1164年）兄、杉本義宗が亡くなり次男の義澄が三浦氏の棟梁になります。
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時政との縁で流人、源頼朝を担ぐ
元々坂東は源義朝の影響力が強い河内源氏の地盤でしたが、平治の乱後、平家に従った大庭氏や伊藤氏の勢力が強くなり、義朝方だった三浦氏には冬の時代となりました。
義澄の正室は平清盛の信任厚い伊藤祐親でしたが、祐親が流人として監視していた義朝の子、源頼朝が以仁王の平家打倒の呼び掛けに応じて治承4年（1180年）に挙兵します。
頼朝は伊東祐親の支配下から離れ、北条時政の屋敷に入り、時政の娘の北条政子を娶っていましたが、時政と義澄は同じく伊東祐親の娘を正室とする義理の兄弟でした。
義澄は義父である伊東祐親を捨て北条時政に味方し頼朝を主君と仰いで挙兵に参加します。
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酒匂川の増水で合戦に間に合わず
頼朝が46人の手勢で伊豆目代、山木兼隆をうち滅ぼすと、三浦義澄も根拠地の衣笠城から500騎を引き連れて頼朝に合流するために伊豆に向かいました。
しかし、当時は台風の接近で大雨が降っていて国境を隔てる酒匂川は大増水し、とても人が渡れる状態ではありません。思案している間に、義澄の下に頼朝の手勢300騎が大庭景親と伊東祐親の軍勢3000人に夜襲を掛けられて全滅し石橋山中に逃げのびたとする報告が入ります。
頼朝と合流できないのでは大義名分も立たないので義澄は衣笠城に引き返します。
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衣笠城が落城、父義明が討ち死に
ところが三浦勢は途中で大庭景親の支配地を焼討ちしていたので、すでに反平家勢力として大庭景親に睨まれる存在となっていました。景親は、坂東八平氏の一派、秩父氏の畠山重忠、江戸重長、河越重頼などに三浦一族の討伐を命じ、畠山重忠は3000の兵で衣笠城に迫ります。
疲労困憊した三浦氏では勝ち目はなく、長老の三浦義明は一族に対して城を落ちて、房総に移動して頼朝と合流するように命じ、自分一人は城に残って奮戦し討ち死にしました。
この時、義明の首を討ったのは畠山重忠で、以来、三浦一族と秩父一族は険悪な関係になります。
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房総半島で再起した頼朝に合流
房総半島に逃れた義澄は、先に逃れていた北条時政と合流、さらに土肥実平に伴われた頼朝とも再会しました。
房総半島で頼朝は、大豪族の千葉常胤、上総広常を相次いで味方にする事に成功しますが、上総広常を説得したのは三浦義澄の甥にあたる和田義盛であるようです。
かくして息を吹き返した頼朝軍は数万の大軍となり、親平家の勢力を駆逐しながら進軍し、根拠地である相模国の鎌倉に入城しました。
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義父の伊東祐親を預かるが…
大庭景親や伊東祐親は逆に頼朝の軍勢に追い詰められる事になります。頼みの綱は福原からのんびりやって来た平維盛が率いる頼朝討伐軍ですが、討伐軍の士気は低く脱走兵が続出、富士川では甲斐源氏、武田信義の4万騎に恐れをなし、戦う事なく潰走しました。
これで、望みが絶たれた大庭景親は投降して斬首されます。
一方、三浦義澄や北条時政にとっては義父である伊東祐親も捕らえられ義澄や時政の助命嘆願で命は助けられ三浦義澄に預けられます。
しかし、伊東祐親はかつて、頼朝と娘との間に生まれた子を自分が殺した事を後悔し、自責の念に駆られて自害したと伝わります。
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苦難の頼朝を支え鎌倉幕府の宿老へ
その後、義澄は千葉常胤や上総広常、土肥実平とともに頼朝の宿老として活躍。一ノ谷の戦いや壇ノ浦の戦い、奥州合戦にも参加して武功を挙げ続けました。
このような功績から義澄は建久元年（1190年）頼朝が上洛して右近衛大将に任命された時にその警護をする7人の中に選抜。さらに頼朝から官途を与えられますが老齢の義澄は辞退し子の三浦義村に譲っています。
根っからの武人だった義澄は自身が官途を持つより政治的な才能に長じた嫡男の義村が持つほうが活かせると考えたのかも知れません。
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将軍専制を目論む梶原景時を追放し死去
正治元年（1199年）頼朝が死去。頼朝の子、源頼家が二代将軍に就任します。しかし、頼家は御家人の意見よりも将軍独裁を優先し、これに異を唱えた北条時政や北条義時などにより、十三人の合議制が発足。頼家はこの条件を認めざるを得なくなります。
御家人と将軍権力が対立する中、頼朝の一の家来と称された梶原景時は、頼家の政治を誹謗したとして重臣、結城朝光を処断しようとしました。
これに対して御家人が猛反発、義澄の子の義村が中心となり有力御家人66名から梶原景時を追放するように署名を集めた66人の弾劾状を作成し政所長官大江広元に提出。将軍頼家は梶原景時に申し開きを求めますが、もはや鎌倉に自分の居場所はないと悟った景時は釈明せずに鎌倉を去ります。
三浦義澄はこの66人に名を連ね、梶原景時の失脚を見届けた後、正治元年、74歳で死去しました。
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日本史ライターkawausoの独り言
三浦義澄には陰謀めいた陰はなく義理の兄弟の北条時政と協調し頼朝を支えていった印象です。
しかし、頼朝死後は二代将軍頼家の独裁傾向に不満を持っているようなので、よそから来た源氏に政治をいいようにされる事には反発心があったのかも知れません。その点は独立心が旺盛な坂東武者っぽい反応ですね。
三浦氏は義澄の跡を継いだ義村が身内をも裏切る政治的バランスを駆使して繁栄しますが、摂家将軍藤原頼経に接近しすぎた事で北条氏に警戒され、執権北条時頼の時代に滅ぼされる事になります。
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