源頼朝の妻と言えば「北条政子」がとても有名ですね。政子は嫉妬深く、頼朝は側室もなかなか持てなかったようですが、実は「政子の前に妻がいた」という説があるのです。
その妻は「八重姫」というらしいのですが、今回の記事ではそんな源頼朝の最初の妻について探ってみようと思います。
この記事の目次
流罪先で頼朝、八重姫に出会う
源頼朝の父、「義朝」は「平治の乱」で敗死、息子の頼朝も処刑されそうになりますが、「平清盛」の母の助命により伊豆の国に流罪となりました。
頼朝は罪人ですので、監視下に置かれていたのですが、その監視の役目を担っていたのは「伊東祐親」という武士でした。彼には4人の娘がいたのですが、その中でも美人と言われていたのが「八重姫」でした。そして頼朝は八重姫と出会い、二人は惹かれ合っていきます。
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源頼朝と八重姫の間に子供が生まれる
二人は昼間は人目を気にして会うことはできなかったため、夜だけ「音無しの森」で会うことにしていました。事実上、八重姫は頼朝の「最初の妻」となるのです。
何度も密会を重ねた二人には子供が授かり、「千鶴丸」と名付けられました。それは八重姫の父、伊東祐親が京都に出張中の出来事だったのですが、千鶴丸が生まれて3年後、祐親が伊豆に帰ってきます。
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佑親激怒で息子は・・・
ある日、祐親は庭で遊んでいる幼児を見かけます。「あの子は誰だ?」と尋ねても周囲の者は口を閉ざします。佑親は怪しみ、自身の妻を詰問するとその妻は白状します。「あの子は八重姫の子供で、父親は流人の頼朝です。」と。
これに祐親は「平家の罪人と娘がこんなことになるとは」と激怒し、ためらいつつも千鶴丸を「轟ヶ淵」という場所で水に沈めて殺してしまいます。そして八重姫を幽閉し、「江間小次郎(小四郎)」という者の妻に決めてしまいます。
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頼朝、逃げる
祐親は頼朝にも追手を差し向け、夜討ちを仕掛けようとします。しかし、祐親の次男「祐清」が頼朝に危機を知らせ、頼朝は北条時政の屋敷に避難し、そこで北条政子で出会い、二人は結婚してしまいます。
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悲しき最後の八重姫
一方、八重姫は無理やり結婚させられたものの、頼朝への思いを断ち切ることはできませんでした。そこで八重姫は侍女とともに屋敷を抜け出し、頼朝のいるだろう北条の屋敷に到着します。
しかし、それは頼朝と政子が結ばれてしまった後でした。行く場所が亡くなってしまった八重姫。彼女は「私は不幸にして死にますが、魂はこの地にとどまって女人の守護神となります。」と「真珠ヶ淵」という川に身を投げたと言い、同行した侍女たちも自害したのです。
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残念ながらフィクション?
とても悲しい話ですが、実は「吾妻鏡」など、当時の歴史書や、残る日記などにも「八重姫」の名前は登場しません。「平家物語」や「曾我物語」などの「軍記物語」のみに登場します。
しかもそれらの物語には「八重姫」という名前は見られず、「伊東祐親の娘」とだけ出てくるのです。「八重姫」の名前が書物に見られるのは江戸時代末期で、伊豆の「地誌(地方の歴史書)」で初めて見られるようで、現在ではその名前が定着しているのです。
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八重姫が祀られた「真珠院」
「伊豆長岡駅」から北西に1キロほどの場所(徒歩12分)に「真珠院」という場所があります。ここは源義経の妻「静御前」が八重姫に同情して八重姫が身を投げたとされる「真珠ヶ淵」の近くに「静堂」を建てて供養したと伝わっています。
その静堂はのちに「真珠院」に移され、八重姫は「お静さん」と言われ、縁結びや子授かりの神として祀られることになるのです。毎年4月には「八重姫祭り」が行われ、八重姫の供養を行っています。真珠院「静岡県伊豆の国市中條2番地」
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頼朝と八重姫が密会した「音無神社」
八重姫は頼朝の「最初の妻」として密会を重ねていたのですが、その場所が「おとなしの森」と言われる場所です。それは静岡県伊東市に流れる「伊東大川」東側にあり、現在は「おとなしの森」には「音無神社」が建てられています。
そこには頼朝と八重姫が祀られており、寄り添うように立つ境内の二本の木は「縁結びの木」として信仰を集めています。音無神社「静岡県伊東市音無町1‐13」
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日本史ライターみうらの独り言
「源頼朝の最初の妻」とされる「八重姫」は残念ながらフィクションのようです。しかし、史跡は多く残されているので、彼女の気持ちになって巡ってみるのも良いかもしれませんね。
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